地の底から響く悪魔の美声。

 かと思えば、天使をも魅了する切ない魅惑のファルセット。

 音域は実に広く、声質も曲により様々使い分けられる。


 私は彼の息遣いひとつに胸がざわめく。

 奏でるメロディに涙が込み上げる。


 どきどきして、ぞくぞくして、興奮して、胸が痛んで、落ち着かないけれど安心する。

 もう自分でもなにがなんだかわかんなくなるのよ。

 詞の奥深い世界観も魅力のひとつ。

 掘り返して、突き詰めて、答えらしきものに辿り着いても未だ次の扉が現れる、というような、不思議の国のアリスみたいな世界。

 剥き出しのようで、実はオブラートに包まれている言葉は、ぐるぐると頭のなかを巡って心地良い。


 これらの魅力すべてが相乗効果となって、素晴らしく、神秘的なアーティスト・ショウを作り上げているのだから、私には彼の素顔がどんなだって関係ないのよ。

 ハゲちゃんでも、ブサイくんでもどんとこい。

 あ、スタイルは良いのよ、念の為。

 ほっそりした長身に、素敵な長いオミアシ。これは間違いないわ。





 それでも、私は思う。

 ショウはかなりの美形。

 けれど、そのルックスに邪魔されず、本来の歌をじっくりと聴いて貰う為に、敢えて半端な覆面歌手を演じているんだって。



 …これって、ショウを盲目的に愛するが故の、妄想、ってやつかしら?




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