…っなにを、そんなに苛立ってるの?


私は…ただ、夢の中にいただけで、間違ったことなんて何一つしてない。

風が吹くように誘惑されたのは、はるでしょう?


そう、言ってやりたかったのに、



「はるくん…?」


私より、2オクターブは高い旭日先生の声を聞いて、そんな気はほとほと失せた。


お願いだから、“はるくん” なんて、気安く呼ばないでほしい。

はるがはるじゃないみたいだ。
私の知ってる、はるじゃないみたい。



「この男と…霞と、寝たのかよ?」


はるの耳にだって、あきらかに旭日先生の声は届いてるはずなのに、

あえて聞こえないフリをしているのか、
あくまでも他人のフリを続けるのか、

変わらず私を責め続ける瞳に、準備室内の光さえ、見失いそう。



「…寝てない」

「ウソだ」

「ウソなんかじゃない!」


信じられるものなんて、もうないはずなのに。

それでも何かを信じられないと思ってしまうくらいに、まだ信じているものがあったんだと気づいてしまって、訳がわからなくて混乱する。


一度は壊れてしまっていたと感じていたはずの頭も心も、今になってなお、いたい。


割れるようにいたい。



「じゃあ、関係をもったってなんなんだよ?
キス…したのかよ」


おかしくなりそうで、泣き叫んでしまいたいくらいに。