いっぱいたくさんありったけ、香我美に抱いてほしかった。
気づけば、香我美の後ろにもう一人。寸分違いない香我美。更にはもう一人と、合わせ鏡の住人がこちらに来たようだった。
全てがゆっくりと右桜を抱きしめるがべく近づいてくる。笑顔で、もう見られなくなった表情を持った顔で。
「香我美、かが、み……」
目の前にいる香我美にすがろうとした時、腕を掴まれ、引っ張られた。
尻餅をつくまでの強い力。痛みで声をあげる前に――
「兄さん……!」
香我美の首を切り落とした兄を見た。
テーブルにあったカッティングナイフ。ショートケーキの生クリームがごろりと転がる首につき、血と混じって白からピンクになった。


