いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した



不思議の国に警察はいないとメルヘンな考えではく、最初に感じたヴェンスの異質さが起因する。


――何も見ていなかった。


何をしても、何を言ったところでこの男は「そうか」と流すだけ。


答えて質問しているようであっても、三分前の会話を思い出せとなれば、ヴェンスはまた聞くだろう。


思い出せないではなく、思い出す気がない。どうせ下らないと、あの子に関係しないとヴェンスにとっては取るに足らないことに格下げされる。


だから、ヴェンスは何も見ていなかった。視覚に映っても、脳の中できちんと処理をせずにタンスにしまう。


そんな何もなさが、左桜たちにとっては話しやすさになったのか。どうせこの男は理解しても忘れると直感した。