味ではなく想いで食べる結果だ。
おおよそながら理解などできないが、えずき戻す感覚、意識が無くなりそうになる味でさえも、頭に“これは香我美”とあればためらいなどなかった。
愛情があるんだ。
ただそれだけ、故に君たちには理解できない。
こんな愛情を持った時点で、人間(君たち)の枠組みから外れてしまうのだから。
「なるほど。“そんなだから”、この世界と反りが合うのかな」
また一つ納得した口振りでも、ヴェンスの下らなそうな感じは変わらない。
どうでも良さげで、興味さえも満たしたところで満足感というのも得ない。
単なる話、ここで双子から聞いた話は明日にでも忘れる。それほどまでにヴェンスにとっては印象も残らない、アリスとはまったく関係がない話。その場しのぎに過ごす毎日にヴェンスはまた紅茶を飲むことだろう。アリスと共にすることをイメージしながら。


