いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した



もっともそれは、単に“元気がない”とも見受けられる。何にせよ、香我美になにもされないと分かった以上、双子は警戒を解いた。


解いたと言っても完全ではなく、バックは膝に乗せたままだが。


「匂いからして死体だろうね。君ら……ええと」


「右桜と」


「左桜だ」


「そう、まあ名前を知っても見分けられはしないが……僕はヴェンス。しがない帽子屋さ」


ティーパーティーする帽子屋で、かの童話を思い出す。


本当に不思議の国に迷い込んだのかと、右桜は信じかけるも、左桜はまだ半信半疑。


男――ヴェンスが「席替えしなければ見分けられるかな」と言いつつ、興味は依然としてバックの中身にある。