いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した



威圧感はあるもどこ吹く風らしく男はさして気にしなかった。ただ、ちょっとしたことで暴れられては迷惑だと、宥めるように声を出す。


「別にその中の物を取る気はない。僕はあの子以外は特に欲しいとも感じないから。

さっきチェシャとラットがいたんだけど、危険だと出ていったのが不思議だったものでね。納得いったよ、あの二人は僕よりも鼻がいいから」


臭みに負けたんだろうと納得いったわりにはどうでも良さげに男は語る。


出会った時からだが、この男には覇気がない。感情が抜けているような、但し、“あの子”の単語を口にした後に愛しそうに息を漏らしはする。


あの子=感情なのか、話に出てきた失われたアリスが“あの子”となるならば、今の男からは感情が失われているらしい。