右桜に続き、左桜が口を開こうとすれば「話すなら座ればいい」と言われてしまったので、家主の言う通りにした。
長方形の机。家主らしく上座に座る帽子の男の斜め前。男から空席を二つほど空けて双子が腰をつく。
正直、やっと一息つけた気分だった。
歩き詰めで更には“不慣れな世界”。気が休まり、体も休めるとあっては知らずと安堵が顔に出る。
「ずいぶんとお疲れのようだね。紅茶が好きなら飲めばいい」
「いいんですか」
「紅茶は飲むものだ」
右桜の問いにもっともらしくも、やはり回りくどく了承をされた。
初対面でいきなり茶飲み仲間となるのは少々気が引けるも、喉を潤したくはなった。
互いに目配せをしたあと、左桜がポットを手に取り、右桜、自分のと注いだ。


