いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した



入るか否かの選択は考えた末、ケーキ屋ならば店内(屋内)に足を踏み入れてもいいはず。違うならば素直に謝ろうと、左桜は二度声をかけて中に入った。


外見に相応しく、中もメルヘンな。淡い桃色の壁など、女のコの部屋を連想する。


「すみません」

「誰かいますか」


双子の呼吸が合った問いかけに応えたのは物音だった。


かちゃりと鍵を開けたような、食器を重ねたような、些細ながらも目立つ高さは双子の耳に届く。


ある一室から届いた音の便り。ああ、やはり誰かいるのだと確信さえした。


特に甘さが際立つ扉の前、少し間を置いてから、左桜はドアノブを捻った。


「おや、来客だったか」


出迎えにしては眠そうな、気だるさが余韻残す声が、双子に浴びせられる。