いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した



辺りに人はいないことを確認し、訪ねるとしたらやはり家の中に入るしかない。


玄関にチャイムはなく、ノックする役割を左桜は買って出た。


一回、二回。


「すみません。どなたかいらっしゃいませんか」


かしこまった言い方に応答はなし。


いないのか、と思うも、煙突からの煙でまさか火の元無視で留守なわけもあるまいと推測する。


左桜にとってケーキ云々の気持ちはないが、今までこの森を歩いて出会った、人がいる気配から離れる気もない。


せめて出口だけでも聞きたかった。ここでは香我美が寒いと言(思)うから。


「開いてる……」


「開いてるね」


開けるつもりはなかったと言えば嘘になるが、何気なしに触れたドアノブが手のひらで傾く。