もはや歪んだ世界を受け入れた双子に体調の気持ち悪さなどなかったが、いつまでもこんな、居所が分からない気味の悪い森でたむろするわけにもいかなかった。
困ったならば人に聞け。道聞きの初歩をすべく、左桜たちは進む。
案外近くにあったらしい。森の木々がなくなった場所に建物が一つ。
「ケーキ屋……?」
右桜がはてなをつけたがるのも分かる。
屋根が毛皮で覆われ、耳のような煙突が生えた建物は住居と言えばそうだが、オシャレすぎる。
住むだけの建物をこんなにメルヘンにするとは珍しさからの客引きか、建てた人がそんな趣味かのどちらか。
甘い匂いはあの煙突からぽっぽっと出るわっか煙から漂うところから、正に今、ケーキでも焼いているのだろう。


