いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した



そんな嬉々とした双子の鼻に、僅かながら甘い匂いが流れてきた。


すんと息を吸った左桜が鼻を擦る。


「分かるか?」


「なんだろうね。お菓子だと思うけど」


腐敗臭ばかりを横に置いていたため、鈍感になった嗅覚が捉えるほど濃厚な匂い。


砂糖をふんだんに使ったか、もしくは量が多いのか、香りの視認などできないが甘さを纏う風が一筋流れてくるイメージが湧く。


「お菓子ってことは、何か建物でもあるのかな」


「ケーキ屋でもあるのか、こんな場所に」


「ケーキ食べる?」


「お前が食べたいだけだろう……」


「香我美も食べたいよねー」


「はあ、まったく」


行くぞ、と匂いを辿る。ケーキついでに道も教えてもらおうと左桜が思ってのことだった。