腐らない骨を持ち歩くことになるのは大前提だが、過程で腐ってしまう肉を廃棄するわけにもいかない。
――コレも、香我美なんだ。
恋人の指を捨てられるか、愛するものの足を投げれるか、大切なものの顔を放り出せるものか。
余すことなくではなく、余すところがないのだ、要は。
腐敗死体の前に香我美。通常なる思考との真逆で双子は前提を置いてしまう。
「そろそろ、また、食べなきゃねぇ」
右桜の言葉に、左桜は「ああ」と肯定するだけ。
捨てられないのは何故か、それは愛するから。故にの問答で双子が切り離すが捨ててはならないものの処理の答えを見つけるのは早いものだった。
人食と言えば聞こえは悪いが、双子にとっては愛するものが自身の血肉となって、“呼吸する”ことに神聖ささえ覚えた。


