我が子を愛でるように、女神に見とれるように、恋人を愛する柔らかな目で見た後、右桜は香我美と呼んだモノに封をした。
「寒いからね。温かいところに行こうか」
閉めるジッパーの音に重なる優声。
腐敗死体に投げかけるものとは程遠く、そも、右桜たちは死体ではなく香我美(恋人)と見ていた。
バックに収納された肉は、公害にして悪害。それでも彼らは“これも香我美なんだ”と愛せていた。
鳥肌が立つ匂いも、虫を握りつぶすかのような触感も、人間とは言えない見た目でも、愛しい。
全部ひっくるめての愛している。
その愛するものとこうして一緒にいられることが――“持ち歩く”ことで一時たりとも離れないこの構図がどれほどまでに歓喜することか。


