ですが、瀬名さまはわたくしの姿を見ても驚きませんでした。



いったい。


どういうことですの?





わたくしは、ただただ、瀬名さまがふたたびわたくしの目の前に来てくださるのを待っておりました。



知りたいことを訊くために……。








ザザン……ザザン…………寄せては返す波の音を聞きながら、いまだ人魚の姿のわたくしは、隠れるように陰へと瀬名さまに抱きかかえられて無数に転がっているゴツゴツした冷たい岩の上に座っております。



目の前には……悲しみを帯びた瞳を向ける瀬名さまがいらっしゃいます。





わたくしも、瀬名さまも、気絶した男性ふたりを車の中に放置したままです。



ここから出なければいけないのではありませんの?



あの……男性ふたりが目を覚ませば、人魚のわたくしを捕えようと躍起になって探すのでは?




そう思うのに、なぜでしょう。


瀬名さまに言葉をかけることができません。




瀬名さまとわたくしの距離は近いはずなのに……遠くに感じるのはなぜでしょう。





きっと……彼が無言でいるからですわ。



穏やかな優しい微笑みを見せてくださいませんもの……。




瀬名さまは……もう、わたくしのことをお嫌いになられたのでしょうか……。





わたくしが……嫌いって言ったから…………。