夜が黒い巨大な翼をひろげ、天を抱きしめておりました。


夜の中心には輝く真円の月が座し、おのれの下にひろがる大地と海にほのかな光を投げかけていました。



おだやかな春の宵のことでした。



力ある魔術師ならば、優しげな風のなかに歌声を聞いたかもしれません。


地の果てから流れくる生きとし生けるものの生命の歌声を。