「安物で悪いけど」 「そんなの関係ないよ」 まさかこれをはめる日がこんなにも早いなんて思いもしなかった。 そしてまた、さっきの質問を投げかける。 「なんでスーツ?」 「決まってんだろ?お詫びと挨拶しにいくんだよ。“お嬢さんを下さい”って」 「え?」 (“お嬢さんを下さい”?) 今春人、そう言ったよね? 「ほ、ほんとに・・・?」 恐る恐る聞いてみた。 間違ってたらどうしようかと思ったから。 「ほんと」 そう言って春人が私の頭に手を置き、視線を合わせた。 私はその瞬間、涙が出てきた。