司は、パジャマ姿でも、とってもかっこいい。

 ついこの間まで、HIDEっていうバンドのヴォーカルだったんだ。

 ただのアマチュア。

 インディーズバンドのくせに、彼がひとたび歌うとなれば。

 ライブハウスが、あっという間に、定員オーバーになる。

 そんな彼を、わたしは、今、独り占めしていた。

 司の全部が、わたしのものだった。

 男子にしては、ちょっと長すぎの茶色の髪も。

 『キレイ』なんて言葉が似合う、整った顔に、白い肌も。

 そして。

 琥珀色の瞳も。

 ……って、今は。

 だいぶ長いあいだ閉じているけれど。

 本人も、わたしも、気にしない。

 司は、よくピアノも弾いている、細く長い指先を、わたしに向かって、しなやかに伸ばし。

 わたしは、その手を自分の頬に導いた。

 実は、司は、盲目だったから。

 ……自分を取り巻く世界が、明るいか、暗いかも判らない、完全な盲で。

 わたしの存在を、確かめたいと思った時。

 司は。

 手と、唇で、わたしを、感じてくれるんだ。