普通に考えればありえないものでも、実際に目にしてしまったのでは否定のしようがない。
否、人の中には見なかったことに出来る人間もいるのかもしれないが。
由貴はそうではなかった。
だが、急にこんな状況を見ても生きている由貴にもどうしていいのかはわからない。
由貴が最初に考えたのは、涼や四季には話してもいいかということだった。
涼は静和の妹だし、四季にも猫の静和の姿が見えるのなら。
こんなことをひとりで考えていても息が詰まってしまいそうだった。
静和も、涼と四季になら話してもいいと言ってくれた。
翌朝、由貴は何となく早く登校してしまった。
ゆうべはなかなか寝つけずに、起きる時も早くに目が覚めてしまったのである。
桜沢涼とよく一緒にいる吉野智という少女が既に登校してきていた。
由貴の顔を見ると明るく挨拶をしてきた。
「よ、委員長。おはよう」
「おはよう、吉野さん」
吉野智はちょっと面白い話でもあるように、つつつと由貴のそばに寄ってきた。
「で、委員長。その後どないですか?」
「何の話?」
「またまたまたー。あの涼が最近、普段話題に上りもしない男子の話なんかしましてよ」
「ええ?」
「ええ?…って委員長。委員長はその気まったくナッシング?」
「その気って、何かたぶん違うよ」
由貴は寝耳に水という感じでそこは否定してしまった。
吉野智はその反応を見て何故か少し安心したような表情になる。
「なぁんだ。…まぁほっとしたというか、涼と委員長じゃあなぁというか」
気になる言い方だ。由貴は桜沢涼と一緒に帰った日のことを思い出して、智に訊いた。
「この間桜沢さんと一緒に帰ったんだけど、その時のこと?誰か何か言ってるの?」
「んー。…そう根も葉もないまでは行かないけどね」
ショートの髪にくしゃっと手をやり、吉野智は言葉を濁した。


