忍の語った言葉から忍の父親がどういう価値観の人間であるのかを読み取ることはできなかったが、今まで音沙汰もなかった父親が現れてしまったことで忍が明るい気持ちになれなくなっていることは、その表情から読み取れた。
「…四季くんとは?」
涼がシンプルな疑問を滑り込ませた。
「四季?」
「忍ちゃんのお父さんが現れたら、同じくらい不安になるのは四季くんじゃないかと思って」
忍は昨日の四季を思い出した。
四季も──不安だったろう。
だが。
「──大丈夫」
忍は静かに言った。
「四季は不安にはさせない」
意外にも力強い忍の言葉に不安を払拭されたのは涼と智の方だった。
これくらいのことに動じて忍が自ら望んで四季のそばを離れることはない。そう思えた。
「私ね、家族は『諦める』ものなんだって思ってた」
忍は静かに言った。
「運動会の時に誰も見に来てくれなくても、生理が始まった時に話せる人がいなかったことも、求めるのはいけないことなんじゃないかって思ってた。でも、四季は違った。求めてもいいって言ってくれた」
「『諦める』だけしか教えてもらえない家族ってのも、忍的には淋しいよな…」
智は家族のことが何だかんだ好きだ。
でも、もし自分が忍の立場だったら、同じように家族を好きだと思えただろうか。
子供は親を選べない。だから親には責任があるのではないだろうか。


