体育の授業は四季はまだ受けられないので、他の生徒が着替えている中、四季は音楽科で使う楽譜を揃えると、片手に持った。
「四季くん、楽しそうですなー。俺らなんかここんとこ、持久走よ、持久走」
本田駿がうらめしそうな顔をする。
四季はにっこりした。
「うん。体育はそのうちね」
「やっぱり体育なんかはハードなのか?君には」
「ハード…そうだね」
四季がどう説明していいのか考えているそばで、由貴が言った。
「たとえば駿なんかは怪我しても、よっぽどの大怪我でもない限り大丈夫だろう。四季なんかはまだ免疫力がどれくらい回復しているのか様子見している段階だから、うっかり怪我させてとか埃の多いところで運動させて、肺炎だとかにつながったら困るって話」
「ああ…なるほろ」
駿は納得した様子になる。黒木恭介が口を挟んだ。
「好きなのがピアノでよかったよな。あれは埃が立つようなものじゃないし」
「うん。そうだね」
「うわーじゃあ俺なんかが四季くんみたいな状況になったら、つらいわー」
「あーお前死んでそう」
「殺すなコラ」
恭介と駿のかけあいが可笑しい。笑って、教室を出た。
四季が行ってしまって後、恭介がめずらしく心配そうに由貴に訊いた。
「あいつ、普段からあまり食べないの。家とかでも。実際細いだろ」
というのは、四季の衣装を面白半分に着てみようとした男子たちが、サイズが合わなくて着れなかったのである。
四季は身長はそれなりにあるのだが、身長に対して体重がないのである。
「ちなみに四季くんて体重何キロ?」
「174センチで50キロ」
駿があんぐりと口を開ける。
「俺なんか169センチで57キロですよ。黒木くんは?」
「俺?172センチで、体重お前と同じ。由貴は176センチだったっけ」
「うん。体重…どうだったかな。最近計ってない」
「60はないだろ。由貴も」
「そうだね」
駿がうっとりと言った。
「しかし、ノリで四季くんに女装と言ってみたのは正解でしたな。俺、ちょっと楽しみだもん」
由貴がめずらしく賛同する。
「四季なんかは綺麗に映えるよ。振る舞いも品があるし」
「…四季に惚れる奴、いたりして」
ぼそっと恭介が呟くと、駿がピタッと止まった。


