雛子の見方は面白かった。言われてみると、由貴の最高はオールラウンダー的な最高だ。でも四季は由貴とは違い明らかに弱点はある。
物の考え方でも考えて考えて考え抜いてそうなったという結論を出すタイプではなく、理論的に考えて答えることもあれば、感覚的にパッと「これは違う」と感じ取ったら「僕はそうは思わない」と答えたりする。
「何で?」と訊くと「よくわからないけど、こっちがいいと思ったから」。ふんわりしているように見えて、ある意味非常識というのか、つかみどころのない魅力があるのが四季なのである。
「私、綾川由貴を見ていると息が詰まっちゃうんだわ。『こんな当たり前のこともわからないの』って、あれもこれも責められている気がして。わからないわよ。違う人間なんだもの。でも四季くんは周りが殺伐としていても、四季くんなの。人が変わらないってたぶんいいことよ。私なんかはしょっちゅう気分が変わるし、四季くんの感じ方なんてわからないけど、でも四季くんがいることで幸せな気持ちになることが多いのは確か。それって人徳よ、四季くんの」
「なるほどね」
「舘野くんは綾川由貴みたいな人間、鬱陶しいって思ったことはない?」
「鬱陶しいまではないな。…ただ、何考えてるんだろうって思うことはある。あれだけ自分を律することが出来る人間って、どういう精神構造しているんだろうって」
「四季くんは?」
「んー…。四季はね…何だろう。四季がひとりでいる時、見てると面白いよね」
「面白い?」
「うん。飽きない。猫か何か見ている感じ」
雛子には馨の言っていることが面白かった。
「四季くんが猫…。そうね」
「ちょっとわかる?」
「うん。時々『疲れた』って言ってる時とか、眠そうな時」
「無防備な時あるよね。四季は」
「そうそうそう」
いつになく自然な会話をしている雛子に、馨は誠実な口調で言った。
「高遠さん、今みたいな感じがいいよ。四季や揺葉さんといる時も。…この間みたいな感じだと、四季も揺葉さんも、それに高遠さん自身も、傷つくだけだし」
「……」
不意打ちだった。そういう、自分のことを気遣ってくれる言葉が来るとは思っていなかった。
雛子の目が潤む。


