四季も作業は中断して、キッチンへ向かった。
夕食を作るのだ。由貴は食材を買い込んで来ており、すぐに使わないものは冷蔵庫にしまい、シンクで葱を洗い始めた。
「何作るの?手伝おうか?」
「麻婆豆腐。楽だし。四季、お米研いでもらえる?」
「いいよ」
由貴は手際良く豆腐と葱を切り、麻婆豆腐を作り始める。
四季は研いだ米を炊飯器にセットすると、ダイニングテーブルのポットでお湯を沸かし始めた。
「お茶でいいよね?」
お茶を入れようとしている四季に、由貴は返事をした。
「うん。珈琲は食後」
四季はダイニングテーブルでくつろぎ始める。
そこに隆史が帰って来て、四季の姿を見て目を細めた。
「…おや。可愛い子がもうひとり増えましたねぇ」
「お帰りなさい、おじさん」
「いいなぁ。由貴くんと四季くんはいつもラブラブで」
「ラブラブじゃないし」
「…って言ってますが、四季くん?」
「うん。いつもの由貴だよね」
「ラブラブっていうなら、四季、忍は?心配してるんじゃないの?」
「…あ」
四季はそこで急に気になったように呟いた。
「心配…するかな。家を出る時、由貴の家行くからって、お手伝いさんには言って来たんだけど」
由貴はちょっと考えて、こう言い直した。
「心配…というより忍の性格だと、今日は早く帰って四季の顔見てほっとしたかったんじゃないかな、みたいな」
隆史が由貴を見て苦笑した。
「由貴くんは、今日午後から涼ちゃんが体調崩して早退しちゃったものだから、不安なんですよね」
「…うるさい」
照れているのか、由貴は麻婆豆腐をかき回す。
「忍と同じ家に住んでいるのってどんな感じ?」
素朴な疑問だったのか、由貴は四季に訊いてきた。
「俺、たとえば自分が涼と一緒に住むってなると、どうなるんだろうって想像つかないんだけど」
「…そう?由貴と涼ちゃんが一緒にいる時の雰囲気の延長線上って考えたらいいんじゃないの?」
「そうなのかな…。涼って私生活、俺とだいぶ違いそうだから」
由貴には色々思うところがあるようだ。


