全体的に仮止めをしてみて、装飾が入る部分のイメージを掴んでから、四季は端切れの布を紙の上に置き、フリーハンドで布を象る線を薄く書き、さらさらと模様を描き始めた。
紙は模造紙があったから、それを使った。
四季は30分ほどでそれを描きあげると、写真の模様と見比べた。まったく同じではなくてもいい。自分の目で見た感覚で、そのドレスに感じる品の良さ、それに見劣りしないものを自分なりに表現出来ていればいいのだ。
雑多にある布の中から四季はほつれにくそうな素材の布を選んでゆく。
途中で布が足りなくなったりしても困らないように相性が良さそうな布を混ぜて使うことにした。
ビーズを入れると綺麗だろうと思い、選んだ布の上にビーズを乗せてゆく。
──そうしているうち、いつしか作業に夢中になっていた。
玄関のあたりで物音。四季は顔をあげる。鍵が開いていたからそうとわかったのだろう、由貴の声がした。
「四季?来てるの?」
四季は手を休め、部屋から顔を出し、玄関の方に返事をする。
「うん。衣装作ってる。…おかえり」
由貴はすぐに2階に上がってくる。由真の部屋に来た。
衣装を作っている様子を一目して、感心するように言った。
「ひとりで作ってたの?これ全部?」
「うん。由貴は自分の衣装作らないといけないし。硝子さんにお願いしたのは仮縫いだけって言っていたから、裾の装飾部分はまだ考えてなかったかなと思って」
「ああ…装飾部分は最後にって考えてた。でもこれ先に作っていると仕上がった時のイメージが湧くね。へぇ…」
四季が作っていたものをドレスに当ててみて、ちょっと楽しそうだ。
「でも、うちに来てこれ作ってるって…体調どうなの?」
「大丈夫。お昼はお祖父様と一緒で、その後将棋指して…少し眠ってた」
由貴は微妙そうな顔になる。
「お祖父様とって…。かえって気疲れしない?」
「そうかな…。でもお祖父様、僕があまり食べなくても『もっと食べなさい』とか言わないから、そういう意味ではほっとする」
「…あのね」
「でも今日はちゃんと食べたよ」
「四季の『ちゃんと食べた』は量が少ないんだよね…」
言いながら、由貴は自分の部屋に行く。鞄を置いて着替えると、その足はキッチンの方に向かう。


