由貴の部屋に入ると椅子にかけた。
壁にかけた2000ピースのモノクロのジグソーパズルが目に入る。
夏休みに、四季がまだあちこち外を出歩くのは控えるよう言われていた時に、由貴が「これなら大丈夫じゃないの」と選んできてくれたものだ。
モノクロなんて、と思わず四季はツッコミを入れてしまった。
ジグソーパズルはカラーの方が組み上げやすいのである。それがモノクロである上に2000ピース。
こういうのはちょっと難易度高いくらいが面白いよ、と由貴は楽しそうだったが。
だが、作り始めてみると意外に楽しかった。一緒にいるのが由貴だったせいもあるのだろう。
「モノクロなら音楽家の楽譜のジグソーパズルがあるといいよね」と四季が言うと、由貴には「楽譜のジグソーパズルなんか普通の人には組み上げづらくて、それこそ難易度高レベルだよ」と言われた。…それもそうだ。
そのうち、涼や智も加わってきた。
『会長と四季くん、楽しそうなことしてる』
『うわー、楽しそーつーか、面倒くさくねぇ?それ』
言いながら地道に組み上げているうちに、いつのまにか出来上がった。
(そうか…。この頃はまだ、僕、忍のこと知らなかったんだ)
忍をまだ好きではなかった頃の綾川四季が過ごしていた時間。
今では忍のことが好きになってしまっている綾川四季の目から見ると、それは不思議なものに思えた。
(時間って不思議…)
止まってはくれない。
いつも、あるのは今。
過ぎ去った時は何処へ行ったのかはわからないけれど、たった今過ぎ去った時間は、自分の心にだけ残って行くのだろう。
誰が忘れようと、いつか自分がいなくなろうと、そのことを思っていた綾川四季がいた、それが真実。


