忍と美歌が学校に行ってしまって後、四季はひとりぽつんと広い家に取り残された。
父の祈と母の早瀬は仕事に行ってしまっているし、家はしんと静まり返っている。
こんな静寂の中に身を委ねているのは久しぶりだった。
祈や早瀬は四季が「休みたい」と口にする時は、特に何も言わない。
どちらかというと「学校に行きたい」と頑張ってしまう傾向が強い性格であることを知っているから、「休みたい」と自ら口にする時はそれだけの理由があるのだろうと好きにさせてくれるのだ。
9時過ぎまでうとうとしていた。昨日は早く眠ったはずなのに、目を閉じるといくらでも眠れる感じがした。
身体がそれだけ睡眠時間を欲していたのだろうか。
ふとんの中で、ぼーっと予定を組み立て始めた。
洗濯と掃除を一気にやろうとすると疲れてしまうから、洗濯からしようとか。
祖父の家にはお手伝いさんがいるが、祈と早瀬の家には早瀬の方針で基本的にお手伝いさんは入れない。
この家の子でいたかったら、家事が出来る時は自分でやれ、という方針なのである。
勝手がわからないうちは大変に感じていたが、慣れるとピアノの練習と同じで楽しくなってきた。
あと、体調が良くない時に身体を動かしてみると体調が良くなる時というのがあり、小さいうちは自分の体調が思うように把握出来ずに気持ちだけを持て余していたが、最近は不調な時でもある程度はコントロール出来るようになってきたのだ。
しょうが湯で温まって、洗濯をし始めた。女性のものには触ることはない。これも早瀬の配慮だ。
美歌が中学生になりたての頃だっただろうか、「お兄ちゃん、美歌のならドキドキしてもいいよ」と、とんでもないことを言い始めたため、早瀬が「そんなこと言うもんじゃないよ」と怒り、家族で使うタオルやらの洗濯カゴと、女性用の洗濯カゴと分けてしまったのである。
(あの時分けててくれて、良かった…)
まさか自分の彼女が、両親も住まう同じ家で一緒に住み始める日が来るとは思ってなかったから。


