四季本人は口にしなかったが、ピアノを弾きたいだろうとも思えたのだ。
ピアノは練習量と気持ちを込めた時間が、明らかにものを言う。
忍が口ずさみたい時にいつでも歌えるように、四季もここ数日充分に練習時間を取れなかった分、ピアノを弾きたくなっているだろうと。
「身体を休めて、ゆっくりピアノでも弾いて」
四季の表情に戸惑いの後、笑顔がこぼれた。
「ピアノ弾きたかった。どうしてわかったの?」
「何となく」
四季の気持ちを察することが出来たのが嬉しくて、忍も笑った。
そのことを樹に話すと、樹は納得の行った表情になる。
「そうだね。四季、このところ人に囲まれていること多かったし…四季の身体には結構きつかったかも。ピアノを練習したいなら静かな環境がしやすいよな」
「そうね」
雛子もその話を少し離れた席で聴いていて、四季が今日は学校には来ないのだ、と寂しい気持ちになるのと同時に、心が動揺することが無くていいのだ、という、解放感のようなものに包まれる気がした。
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