「──」
(…ああ)
ほわんと胸に優しいものが広がる。
四季を初めて好きだなと思った時と同じ気持ちだった。
見ると優しい気持ちになれる人が、真白は好きだ。
それで自分もその分何か出来たらいいのに、と思うのだ。
「…あのね、先輩」
「ん?」
「私、先輩の彼女見て、何だか苦しくなってきて…それで倒れちゃったの。…ごめんなさい」
「──」
「彼女さん、怒ってました?」
「ううん。…心配してた」
「そ、ですか…」
優しい人なのだろう、たぶん。
「先輩…。彼女さん、大事にしてあげてくださいね」
真白は生真面目にそう言った。雛子が唇をかみ切ったという相手──揺葉忍。
雛子の方は対抗心を全面に出していたが、揺葉忍は雛子のそれにむきになるような人間ではないような気がする。
それがかえって余計にダメなような気がして、真白は不安を覚えた。
四季は真白の不安そうな表情に聞き返す。
「真白は、もうつらくはないの?」
「……。つらいと言えば、つらいです。先輩のことこうして目の前にしていても、好きだなって思ってる気持ちはあります。でも、先輩は今の彼女さんのこと想っているのはわかりますから。だから先輩にはもう二度とつらい恋はしてほしくないって思う気持ちがあるんです」
雛子の恋心が行き過ぎて、四季の幸せを壊してしまうとしたら──自分は雛子の幸せは願えない。真白はそう思ってしまったのだ。
雛子には酷ではあるけれども。
「…ありがとう」
四季は真白の気持ちを素直に受け止めたようだった。
「家まで送る」
四季が申し出ると真白はきっぱりと断った。
「ダメです!先輩は彼女さんのそばにいてあげてください!元カノの心配ばかりしてたら、先輩、彼女さん傷つけちゃいますよ。そうでなくたって、今、彼女さん不安だと思います!」
四季を想っているからこそ言える真白らしい言葉だった。これだけは譲れない。四季はいつも自分のことを気にかけて優しくしてくれたから。
「先輩がどうしても心配なら、私、お兄ちゃん呼びますから。お兄ちゃんもたまには息抜きさせた方がいいし」
秋人のことを出されて、四季が「そうだね」と頷いた。
「じゃあ、秋人にお願いしようかな」
真白はにっこりした。
「はい」


