(──…?)
天井が見えた。平常ではないところへ来たような違和感。
(何処?)
見回して──その動きに反応するように声がした。
「気がついたかね?」
見たことのある老人だった。何処でだっただろう。
「どれ。四季くんを呼ぼうかね。心配していたし」
四季の名を出されて、真白は「あ」と声をあげた。
真白の反応を見て老人はうんうんと頷いた。
「覚えておったか。しばらく待っていなさい」
(滝沢先生──)
喉まで出かかった言葉を真白は呑み込む。
どうして自分が滝沢先生のところに。
いちばん新しい記憶を探る。学校からは…出たはず。そうだ。帰宅しようと歩いていたところで声をかけられたのだ。意外な人物に。高遠雛子。
そこまで思い出して、真白は理由に行き着いた。
(ああ…。そうか、私──)
先輩の彼女を見て。
あんなに急に間近で見るとは思わなかった。動揺した。
(揺葉忍さん…)
きれいだった。
他にどう言えばいいのかわからないくらいにきれいだった。
とりたてて飾り気のない、それでいて品の良い雰囲気が、彼女をよりきれいに見せていた。
考えると胸が締めつけられた。
もう、こんな思いを抱えても、どうなるものでもないのに。
「…真白?」
ぐるぐる考えているところで、呼ばれた。
「せ、先輩!」
叫んで、真白は身を起こしてしまう。四季が部屋に入って来て、真白の傍らに座した。
「先輩…。どうして先輩のところにいるんですか…?」
四季は困ったように笑った。
「うん…。高遠さんをね、忍と探していたんだよ。今日学校でいろいろあって。そしたら高遠さんと一緒に真白がいて──しかも倒れていて忍が抱っこしているから、驚いて。それで先生のところに連れて来たんだけど…」
「あ…」
「真白、小さくて良かった。僕が運べるくらいの子で」
「え」
真白は思いっきり心の中で「きゃー!!」と叫んでいた。
「あ、あの、せ、先輩が運んで…?」
「うん。良かったね」
「よ、良くないです!先輩、手痛めたらどうするんですか!?真白みたいなの運んで!!」
言い方が可笑しかったのか四季が笑いだした。
「ふふ。真白、すごい元気」


