四季たちとは別のところを探していた隆史は、携帯が鳴り、急いでとった。
「はい。──揺葉さん?え?見つかった?」
隆史が携帯に出ているのを見て、由貴が足を止め、話の様子を窺った。
通話が終わるのを待って、隆史に聞く。
「いたの?」
「はい。音楽ホールの近くに」
由貴は疲れたようにため息をつく。
「くっそ…何だよ、あの女!周りに迷惑かけんな!」
「由貴くん」
「何?このことに関して、俺、説教なら聞かないし」
「そうじゃなくて、木之本さんが倒れているので、四季くんが抱きかかえてこっちに向かっているらしいです」
「は?木之本って…」
「はい。真白さんです」
──何で真白が。
意味がわからないといった表情を隠しきれない由貴に、隆史は冷静に言った。
「とりあえず車を回しましょう。揺葉さんには伝えたので」
由貴は、自分のことでもないのに、無茶苦茶面白くない気分で車に乗る。
「…何だよ、雛子から真白から」
隆史はハンドルを切りながら、何も言わない。由貴も誰に聞いて欲しいわけでもなく、やり場がない思いをただ言葉にしていく。
「好きだったら、好きな気持ちだけで何をしてもいいなんて思っているんじゃないのか?それとただの身勝手と何が違うんだよ」
「──由貴くん」
「もう四季のこと振り回すなよ!ムカつく!」
四季のことをそばで支えてきた由貴の姿は隆史も知っている。
知っているだけに──その怒りは妥当なものだとも思えた。
隆史から見てもそこで四季本人が怒ってくれたら、というくらいの気持ちになることもあるのである。
「由貴くんの気持ちもわかりますけど…四季くんもつらいんじゃないでしょうか」
「何が?」
「高遠さんて、音楽科では将来が期待されてる子ですよね。存在感があるから少なからず周りに影響を与えている生徒さんだと思いますし。でも四季くんのことが好きで…。そうなると四季くんさえ高遠さんの気持ちを汲んでくれたら、音楽科の雰囲気は良くなるんじゃないか、という気持ちが周りの人間にあるのが見えてしまうんです。四季くんもその空気を判っていて…。でも揺葉さんを傷つけられてもいるし、本当は今、由貴くんが怒っていたようにバッサリ言い切りたくもなる気持ち、あるのかもしれないですよね。だけど、四季くんはそうは言わなかった」


