忍は言うべきかどうか迷い、口を開いた。
「私も…高遠さん、何を考えているのかわからないって思った」
「……」
「高遠さん、私が四季のこと好きなこと、知っているのに」
高遠雛子がふわりと忍を見る。
「本当に四季くんが好きなの?」
「好きじゃなければつき合っていないわ」
「綾川由貴が好きだったって聞いたけど。四季くんのこと綾川由貴の代わりにでもしようとしているんじゃないの」
「──」
ショックを受けたような忍の表情に雛子は強気で言葉を重ねる。
「そんなに簡単に気持ちが翻る恋なんて、本気じゃないんじゃないの。桜沢静和が好きかと思っていたら、綾川由貴を好きになっていて、それで四季くんに好きって言われたから、今度は四季くんのことを簡単に好きになるわけ?」
「…それじゃだめなの?」
忍は言い返した。
「私は四季のこと、安易に考えているわけじゃない。私は四季に何か返してあげたかった。幸せにしてもらった分。そんな気持ちじゃだめなの?」
雛子はいつになく芯のある忍の言葉に耳を傾ける。忍は言葉を続けた。
「私は由貴のことを好きになった時、そういう恋もあるんだと思った。でも由貴のことも涼のことも守りたいと思ったから、そういう意味で由貴にアプローチしたことは一度もない。友達のまま終わっていく恋でいいと思ったの。…だから、四季が好きって言ってくれた時、私が由貴に片想いをしていることを話して四季が黙ってその気持ちごと受け止めてくれた時、今まで誰にも言えなかった気持ちが、すっと浄化されていって、ほっと出来たの。こんな人がいるんだって思った」
忍の目は澄んでいた。
(四季くんは、揺葉忍が綾川由貴のことを好きだと知っていても、揺葉忍のことを受け止めた──)
何だか悔しい。
自分が揺葉忍のことを好きな四季のことを受け止められていないからだ。
そんなこと。
出来るわけ。
「──忍?」
少し離れたところで声がした。忍も雛子も振り向く。
──四季が立っていた。


