外灯の明かりだけでは顔色まではわからないが、真白は気を失っていた。
忍は雛子のそばまで来て、気遣うように真白の表情を窺い見る。
「──ごめんなさい。具合が悪かった?彼女は…?」
「木之本真白。四季くんの元カノ」
端的に雛子が答えると、忍の表情が凍りつく。雛子が苦笑した。
「あなたもショックで倒れたりなんてのは無しね」
「……」
忍は小さく首肯し、真白を守るように軽く抱きかかえる。
「私が来たから…?」
忍が呟くと雛子はしらっと言った。
「そうなんじゃないの。神経が細い子みたいだし。純粋な子みたいだけれど」
「高遠さんとはよく…?」
「いいえ。話し込んだのは今日が初めてよ。四季くんの元カノだから顔覚えていたし、そのうち話してみたいって思ってたの。でも、あなたも私に対してそうだと思うんだけど、私ってあなたたちを怖がらせているみたいね。私としては不本意だけど」
話し方のせいだろうか、雛子の冷静な物言いは忍の心をも落ち着かせてくれた。
更衣室で傷つけられて後感じていた恐怖感は、この時にはなかった。
忍は雛子に伝えた。
「高遠さん、まだ家に帰ってないのよね。高遠さんの鞄がまだ教室にあるんだけどって、舘野くんが心配して、四季に連絡があったの」
雛子は怪訝そうにした。
「四季くんに?何で四季くんに連絡をとるのよ」
「高遠さんを心配して家庭科室まで行ったのが丘野くんだったらしいから、舘野くん、丘野くんなら高遠さんが何処に行ったのか知っているかもって思ったらしくて。でも丘野くんのアドレスはわからなくて、四季なら知っていると思って連絡をくれたらしいの」
「丘野樹はどうでもいいわよ!」
雛子はピシャリと言い放った。
「私が四季くんのこと好きなの知ってるくせに、あんな…!まともな神経ぶち切れているんじゃないの!」
忍は雛子の激昂ぶりに「丘野くんと何かあったの」と静かに訊いた。
雛子は忍の声のトーンにいくらか気分を鎮めて、話す。
「私の首筋にキスしてきたのよ」
「──」
「何考えているのか、本気でわからないわ、あの男」


