「その揺葉忍、四季の家に住んでいるらしいんだけど」
「ええ?何それ」
「何か…養女の扱いになっているって言ってたかな。揺葉忍の本家に何か事情があるとかで、本家で引き取ることは出来ないらしくて。四季のつき合う子だからって、家の人が揺葉忍の身辺を確認したらしいんだけど。そしたら由緒ある家柄の子だってわかって。桜沢の家にいるより綾川の家にいた方がいいらしいことも聞いたから、何かそういう家の人間同士で揉め事でもあったのかな?これは憶測でしかないんだけど」
「お金をめぐってとか?」
「ま、そんなところじゃないの。四季も揺葉忍もそういったことには関係していなさそうだから、周りの大人の事情か何かあるんだろうね。そうでなければ、四季の家の人間が、それまで縁もゆかりもなかった揺葉忍を家におくはずないし」
「わー…。じゃあ、大人の事情はどうあれ、四季くんと揺葉忍は幸せなのね」
「幸せ…なのかな。家族に知られてる状態ってある意味窮屈じゃない?可哀想な気もするけど」
樹の両親は忙しい人たちでほとんど家には帰っては来ない。
だから樹が高校に入ってから学校から近いこのマンションに住むと言った時も、二つ返事で了承を得られた。
その境遇を樹は悲観はしていない。何もかもを采配される人生なんて、わかりきったドラマの筋書きをたどるくらいにつまらないことだからだ。
ドラマならそれも楽しいかもわからないが、個人の人生がそんなものなら味気ないこと甚だしい。
何かを演じられるほどの余裕のある人生なんて薄くて軽すぎる。
秋風にバラバラと吹かれ転がってゆく、乾燥しきった木の葉のように。
樹はある意味、四季のことを尊敬してはいる。自分がああいう家に生まれていたら、ふさわしいふるまいがきちんと出来ていたかはわからない。
育ちがいいというよりはあれは四季の天分だろう。
いい家柄の人間でも、中身がトンデモな人間はたくさんいるからだ。


