時は今




 四季の家の庭は綺麗だ。

 木々と可憐な花々が家の佇まいにしっくりと溶け込んでいて、訪れるとほっとする。

 ぱらぱらとにわか雨が降り出していた。

 小走りに軒先まで急ぎ、回廊から入って行った。





「──四季」

 コンコンと戸を叩くと、中から「どうぞ」と声がした。

 中には藤宮千歳が座っていた。

 由貴にはよくわからないが、たぶん──千歳は四季の婚約者のような感じだと思う。

 はっきりとそう言う人間がいるわけではないが、家同士の繋がりというのか、やりとりを見ていると「そうではないか」と思わせるものがあるのだ。

 千歳は「あら」と柔らかい笑顔で由貴を迎えた。

「こんにちは。由貴くん。私はこれで失礼するから、どうぞ」

「あ…はい」

 育ちの良いお嬢様という雰囲気の千歳に、由貴は何となく気後れしてぎこちなくお辞儀をしてしまう。

 千歳は四季に「お大事に」と挨拶をして、帰って行った。

 由貴は四季の部屋に入り、後ろ手で戸を閉める。

 四季は和服を着て座っていた。由貴の顔を見てほっとした表情になる。

「座って。お茶淹れる」

「四季…。具合悪いの?」

「大丈夫だよ」

 四季は笑顔でそう答えるが、由貴は少々それが気の毒になる。

 そんなに身体も強くないのに、度々こんな来客があるような立場に立っていると、大変なのではないだろうか。

「俺、帰った方がいい?」

「何で?」

「だって四季休めないし」

「この状況で由貴が帰ったら、僕、寂しくなるんだけど」

「じゃあゆっくりしてく」

「そうして」

 由貴は四季の額に手を当てる。

「熱あるよ」

「うん」

「うんじゃないし」

 それでも四季は楽しそうだ。具合が悪い時の四季はいつもより人懐こい。

 何だか放っておけなくなる。