「──高遠さんは四季のピアノに響いているのかしら。それとも四季自身に?」
「両方、だと思う」
「四季はどう思う?高遠さんの音楽」
「音楽として聴いていいのか、感情として理解した方がいいのか、戸惑う。一途さと闘志の塊というのか──」
雛子の歌声は良くも悪くも両刃の剣だ。
聴く者の心に「何事か」と思わせるような、真っ直ぐで鮮烈なものがある。
「高遠さんは忍とはまったく違うタイプだね。ともするとピアノ奏者を振り回す感もある」
「四季は合わせられそう?」
「頑張ってみるけど」
「私、いた方がいい?」
「忍は、高遠さんと僕がふたりで練習していても、つらくない?」
忍は考えるように目を閉じた。
「大丈夫だと思う。高遠さんと話してみる」
「──。バレエでも息が合うダンサー同士と合わせにくいダンサー同士がいるみたいだけど、こんな感覚なのかな」
「そうね。『音楽』は『試合』ではないから、あまり殺伐としたものになってしまうと、聴いている人も心配になると思う。合わせる練習は必要だわ」
四季は忍と手を繋ぐ。
「不安になったら言って」
「──うん。四季も」
忍は四季の手を握り返した。
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