時は今




 だが同じように音楽を愛していても、対抗心を持つ人間もいるのだ。

「四季はコンクールに出る時はやっぱり1位を取ることを考えてる?」

「1位を取ることが目標というよりも、自分の中でいちばんいい演奏が出来るように考えてる。それで今までに1位を取れたというのは感謝することなのかもしれない。どのコンクールで弾いても、1位はたったひとつしかなくて、そのたったひとつが欲しい人って、たくさんいる気がするから」

「──そうね」

「忍は?」

「私も自分の目指す最もいいものが表現出来たらいいと思うだけ」

 忍はそう言って、複雑そうに空を仰いだ。

「スポーツ…たとえば短距離ならいちばん速く走ればいいわけじゃない?でも、音楽とか芸術の分野での1位って、とても難しい気がするの。早く弾けばいいというものではないから。それを受け取る人によっても評価はまったく変わってしまうし…。それに本当にいいものに出会っても悔しくて貶そうとする人も、逆に人の噂に踊らされていいのかわるいのかわからないものを賞賛している人もいるわ」

「──。でも忍の音楽、僕は好きだよ」

 四季と目が合う。

 結局そこなのだ。

 本当に『響くもの』はどうやっても選ばれる。残って行く。