「高遠雛子の強い個性は、持とうと思って誰にでも持てるわけではないから大切にした方がいいんだろうけど──でもアクが強く出過ぎてしまうのは困る。定期演奏会は四季のピアノだから、今のうちで揺葉忍とも高遠雛子ともうまく行くように合わせておきたい。だから、四季に高遠雛子の歌見てもらって欲しいんだけど…問題ある?」
「それは忍も一緒にってこと?それとも高遠さんとふたりでってこと?」
「それは任せる。僕は『森は生きている』を聴かせる音楽にしたい。本来は指揮者の僕が見た方がいいんだろうけど…高遠雛子の気持ちは綾川四季と揺葉忍に行ってしまってるから」
「……」
「揺葉さんにも話してみて。彼女の立場だと高遠さんに四季をつけるの複雑だと思うし」
「──わかった。話してみる」
音楽をやっている以上はこういうことは避けられないことだ。
ピアノを弾いていたら、これから先、忍ではない歌い手やヴァイオリニストと組んでいくこともあるだろう。
音楽は相手の呼吸がわかっていなければ合わせられない。
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