時は今




 由貴はやりきれない気分で雛子を見る。わかっていて止められないのだろう。どうしようもない。

「──すごい痛い話」

「それもわかってるわよ」

「残酷なようだけど、四季、半端な気持ちで忍のこと想っているわけじゃないから、高遠さんの願ってることは永遠に叶わない気がする」

「──。どうして諦めのいい人間が多いのかしらね。こうと思うなら、誰にも渡さないくらいの気持ちってないの?」

「高遠さん、四季が好きなんだよね?好きなら四季の幸せを潰してまで自分の願いを叶えたいってこと?それで高遠さん幸せなの?俺にはわからない」

「私にだってわからないわよ。こんなぐだぐだ。でも好きなら好きな人のいちばんになりたいのよ。ただそれだけよ」

 何かを割り切ったように由貴は雛子に言った。

「わかった。歌いたいなら歌えばいい。気のすむようにやってみればいい。ただ俺も四季と忍が大事だから、俺には俺の気持ちがあるってこと覚えといて」

 雛子の表情が少し晴れたように由貴を見る。

「つき合ってくれるの?」

「歌の練習にってことなんだよね?いいよ。それくらいなら」

 由貴はそこまでになれる雛子の強情さ──裏を返せば一途さとでもいうのか──彼女のうたう歌というものがどういうものなのだろうという興味を覚えていた。



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