時は今




「ピアノだと、四季がいてくれるみたいでしょう?」

 忍が本当のことを言うと四季は照れたようだった。

「僕ならここにいるけど」

「うん。知ってるけど」

 ピアノを包んでもらい、紙袋に入れてもらった。

 大事そうに紙袋を抱えている忍を見て、四季は嬉しい気持ちになる。

「忍」

「ん?」

「この間のこと…うちの親に話してみた。うちの親は忍がその気持ちがあるならって言ってくれてる」

「そう。私には勿体ないお話だけど。ありがたいことだわ」

「日曜日、桜沢の家にお話に行きたいんだけど、忍はいい?」

「うん」

 忍の方から手を繋いできた。

「…四季、ありがとう」

「ありがとうって?」

「いろいろな意味で」

「──うん」

 交わす言葉がさらりとした空気にとけてゆく。

 今、この時、あなたがそばにいる。

 類い稀に出会う音の連なりに出会ったように。

 これは今だけの特別だろうか。それともはじまりだろうか。

 はじまりなら、あなたがいい。



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