時は今




 10月15日・16日の中間試験が終わり、17日から答案用紙が返され始めた。

「わーい。奇跡」

 四季が数学の答案用紙を見て笑顔になった。

「何、その喜びよう。何点だよ」

 黒木恭介が尋ねる。

「75点」

「…75点で奇跡かよ、お前」

「黒木くん何点なの?」

「89点」

「ふーん。黒木くんも良かったね」

 とりあえず四季に嫌味は通じないらしい。四季の明るい表情を見ていると嫌味を言う気も薄れて、「ま、お前も良かったな」と恭介はほめてやった。

 数学の満点は2名。綾川由貴と桜沢涼である。相変わらずというか何というか。

「…本田くん、何点だったの?」

 四季はいつになく静かな本田駿に訊いた。本田駿は机に突っ伏していたが、首だけをこちらに傾けて「…74点」と答えた。

「あーこの俺が!数学で綾川四季よりも下!何たる屈辱!」

「本田くん、化学で満点取ってなかった?どうしたの、数学」

「わからんのだ!くぅぅ次で挽回してやる!」

 本田駿は勝手に四季をライバル視して嘆いているようである。

 駿を見ていて──四季は「ああ、本当に試験を受けられるようになったのだ」という感慨が胸に広がっていた。

 退院後、ひとつ下の学年で再スタートして、学校の試験をきちんと受けられたということが嬉しかった。

「──四季。どうだった?試験」

 他のクラスメイトと話をしていた由貴が席に戻ってきた。

「うん。良かった」

「そう」

 由貴も四季が無事に試験を受けられたことが嬉しかったのだろうか。「ちゃんと受けられて良かったね」と言った。