忍には自分の家にこだわる理由はなかった。
「私は自分の家に必要とされていると思ったことがないの。お祖母様とはこれから会って話はするはずだけど…。四季を選ぶなら、私は四季の家のことを考えると思うわ。四季のことも」
──四季が忍を抱きしめた。
「…ありがとう」
「四季」
「すぐにでも家に来て」
すぐにでも、という言葉に忍は笑ってしまった。
「大丈夫?私なんかで。四季の親族に反対される可能性もあるのよ」
「大丈夫だよ。桜沢の家から来る人間にぞんざいな扱いは出来ないよ」
忍の中にはどうなるかわからない不安があったが、四季の腕はそれを覆う確かな安らぎで包んでくれた。


