「相続権、どうしよう」
「きちんと考えた方がいいと思う。忍は気が重いはずだけど、こういうことをする人間たちに権利を渡してしまうと、ろくなことにはならないよ。金で回る物事というのは実際にあるから」
「──そうね」
「それに、忍が音楽を続けたいなら、こういうお祖母様との繋がりがあるのは、いいことだと思う」
「うん。私も一度はお祖母様に会っておきたい。その時は四季も一緒に来てくれる?」
「うん。体調整えておく」
「ありがとう」
「そんなに気に病まないで。僕も音楽を続けて行くなら、こういう繋がりがあることは僕にとってもいいことだから」
こういうことを言ってくれる人がそばにいてくれることが忍は心強かった。
「──四季。四季はピアニストを目指すのよね?」
「うん。そのつもりだけど」
「お家は?後継ぎの問題があるんじゃないの?」
「料亭と旅館は…美歌が継ぐと思う」
四季は静かに語った。
「僕は小さい頃から身体がこうだったから、親族の間でも僕に継がせるのは無理じゃないかとか、いろいろ話されていたみたい。美歌は快活で気丈な子だったから、うちの母なんかは『四季に何かあったらお前が継ぐんだから、お前もその気でいとけ』って育てていたし」
「…そう」
「家に何かあったら勿論関わらないわけにはいかないはずだけど」
そこまで言って、四季の瞳が忍を見つめた。
「忍…。忍が綾川の家に来るということは、親族は忍のことを僕の結婚相手として見ると思う。僕自身は現段階でそこまで忍のことを束縛しようとは思わないけど。忍はそれでも平気?」
忍は頷いた。
「うん。大丈夫」
「…本当に?選択肢がないからとかじゃなくて、納得してる?」
「納得してる」


