四季が紅茶を淹れている間、手紙の話をしたかったのだと忍は思い出し、鞄の中にしまっていたそれを取り出してきた。
アールグレイの香りがほのかに漂ってくる。四季が紅茶を運んで来た。
「ああ…手紙?」
「──うん」
四季が座るのを待って、忍は口を開く。
「静和の代筆って…四季、静和に会ったの?」
「ううん。静和さん、もう自分の身体はないから、人の目には見えないんだって言ってた。自分では書くことが出来ないから、それで僕のところに」
「どうやって…?」
「猫になって」
「え?猫?」
「うん。生きている猫の身体を借りたのか、そのあたりはよくわからないんだけど。灰色の綺麗な猫。──忍たちが眠ってしまって、僕がいったいどうしたんだろうって思っていたら、猫が現れて。その猫が静和さんだった。静和さんは『忍たちは眠っているだけだから大丈夫』って言っていたから、多分静和さんが眠らせた…のかな。僕が紙に五十音を書いて、それを猫の静和さんが手で言葉を指し示して、少しずつ代筆」
「そんな方法で──」
「猫の姿だと怪しまれないでしょ?どんな方法で取り返したのか証拠も残りにくいし。静和さんはどう取り返したのか、そこまでは話さなかったけど」
「…そう」
危険なことは全部静和が背負って行ってくれたのだ、と忍は思った。
紅茶を飲みながら、これからのことを考える。
「──。私、四季の家に来てもいいの?今度は四季が危険な目に遭わない?」
「大丈夫だよ。もし危険な目に遭うのなら、もっと早い段階で遭っていると思う。鍵を先に渡したのは様子を見ていたからだって、静和さん言ってた。鍵を渡しても何も起こらなかったから、手紙も大丈夫だと判断したみたい」


