涼は少し考えて言った。
「涼は涼だよ。何処からが綺麗で綺麗ではないのかなんて、涼にはわからない。でも綺麗な気持ちが会長を癒してくれるなら、涼は会長のそばにいられて良かったと思う」
「……」
「会長が綺麗な気持ちを感じることがあるなら、それは会長の心が綺麗なんだよ。涼は何もしてない」
そう言って、涼は小さな顔に微笑みを浮かべた。
「会長が壊れそうな時は言って。涼は会長ひとり分の気持ちなら受け止められる。涼はひとりだから」
開け放された窓のカーテンがふわりと揺れた。
それで、涼の向こうに星空が広がっているのを、由貴は見る。
「星…」
「え?」
「今気づいた。空すごく綺麗。一緒に見よう」
由貴の表情は穏やかなものになっていた。涼とふたりテラスに出る。
幾つもの流れ星が尾を引いて流れてゆく。
何万光年、何億光年の彼方の光を見ている自分と、こういう些細なことで揺れ動いている自分が同じであることに意味はあるのだろうか。
もしかしたら、人の心に見える光も、それと同じなのかもしれない。
己の心の目がくもっていたら、気づけばすぐにでも見える遠く近い光を美しく感じることはないのだ。
決して。


