「おや、いい匂いがしますね」
隆史が髪を拭きながらリビングにやって来ると、鍋の中のすき焼きが、丁度いい頃合いになっていた。
「あれ?会長たちは?」
「すぐ来ると思うんですけど…」
言い終わらないうちに、由貴と四季がひょっこり現れた。
「わ…。美味しそう」
「僕、忍の傍がいい」
「はいはい。四季は食欲より忍さんですか。もーいいから、座れ座れ」
智の投げ遣りな口調に、笑いが起こる。
四季は忍の傍らに身を落ち着けた。
「…眠い」
「え?大丈夫?」
「うん。今日、たくさん書いたから…」
「あ…」
忍は静和の手紙のことを思い出す。
そうだ。自分たちはあの時眠っていたのだが、手紙を代筆していた四季は、その時間は眠っていないはずなのだ。
「──手紙読んだ。ありがとう、四季。キツかったら休んでる?」
忍がそう言うと、四季がほっとしたように笑みを浮かべる。
「…食べてからにする」
智はそのふたりの会話で察したのか、音頭を取る。
「じゃ、四季が起きてるうちに乾杯だけ行くぜ」
グラスに飲み物が注がれ、乾杯、とグラスが鳴り合う音がした。


