涼たちがお風呂から上がって髪を乾かしていると、今度は由貴たちがバスルームで騒ぎはじめた。
「やだ。四季とはいいけど、親父とは嫌」
「何それ。由貴くん、それは差別でしょう」
「由貴、おじさん悲しんでるし、一緒に入ってあげたら?おじさん、たぶん由貴とがいいんだよ」
「絶対、嫌」
涼と智と忍はそれを聞いてクスクス笑ってしまう。
「ははは。会長も微妙なお年頃だ」
「智は自分の親とお風呂入っても平気?旅行とか行って」
「うーん…。少し照れはあるかなぁ。小さい頃は一緒に風呂に入っても、この歳になるとなかなかないからな」
この中では智だけが唯一両親が健在の家庭に育っているのだ。
涼は事故で母親が他界してしまっているし、忍は忍で母親が蒸発して桜沢の家に引き取られた感じになっている。
「智の家、楽しそう」
忍には両親がいて兄弟がいる家庭というものがどういうものなのか、想像がつかない。
智は忍のある意味純粋な眼差しに、弱ったように「ははは」と笑う。
「うるさいだけだぜ、うちは。まあ、いなかったらいなかったで物足りないんだけどよ」
「そう?」
「忍は四季の家行くことあるだろ。四季の家は大きい分それだけ人がいっぱいいるし、端から見ても大変そうって思わねぇ?まぁ、うちみたいな一般家庭とは比較しようがないだろうけど、人間関係はやっぱ大変だぜ。何処に行っても」
「そうね。そうかもしれない」
「忍は今のうちに自由な時間満喫しときな。四季を選ぶんだったら、否応なしに向こうの人間とは関わらなきゃいけなくなるんだろうから」
「うん」
忍はある意味、自分の実の両親のことはあまり考えなくてもいい分、その生まれ育った境遇が良かったのではないだろうかとも、ふっと思った。
あまり幸せだったとは思わないけれど、それが今の自分の幸せとすぐ隣り合わせにあるような気がするのだ。


