智と隆史が別荘に戻って来ると、花びらの入浴剤を入れたバスの匂いがふわりと漂ってきた。
リビングにいたのは由貴と四季だけで、涼と忍の姿が見あたらない。
「お嬢さんたち、もしかしてお風呂?」
「うん。さっきまで入浴剤どれにしようって、広げてた」
「わーい。私も混ざってこよう」
智は由貴と四季に、食材とケーキを冷蔵庫に入れて置くようお願いすると、バスルームに行ってしまった。
「楽しそうですねぇ、お姫様たちは」
隆史がほのぼのと言う。
「──うん。豆腐、白菜、牛肉…。すき焼きかな?これ」
由貴が袋から取り出しながら食材を検分する。
「鍋物なら間違いないだろうって、吉野さんが。四季くんは温野菜がいいんじゃないかとかね」
「…うん。その方が嬉しい」
「吉野さんいい子ですよねぇ。ちゃんとこういうところは考えてるんですよね」
「じゃあ、野菜は洗って切っておこう」
「僕、お米研いでおく」
──その時。
バスルームの方で女の子の悲鳴があがった。
由貴と四季と隆史は驚いて、行ってみる。
「何?大丈夫?」
「会長、コードネームGだ!!」
「G?」
「真夏のホームステイ様──の生き残り!!」
吉野智は雄々しく叫んで「そこ!」とスリッパを投げつけた。
それで事態は落ち着いたのも束の間。
涼と忍はキャミソール姿だったため、由貴と四季を目にしてまた悲鳴をあげた。
「会長、見ちゃだめ!」
「ご、ごめん」
智は「あらら」と苦笑した。
「すまんねー。王子様方。…あとでね」
ひらひらと智に手を振られ、由貴たちはリビングに引き上げてくる。
由貴と四季は、ぼーっとしている。隆史が笑った。
「すごいの目の当たりにしちゃいましたねぇ、由貴くんたち」
「…いいな。吉野さん」
四季は素直である。
「四季」
由貴はいいとがめるが、動揺していた。
生まれて初めて見るような涼を見た気分だった。


