時は今




「──涼ちゃん、泣きそうだったね」

「…言わないで」

 1階では男子ふたりが気まずい空気を持て余し気味にしていた。

「四季」

「何?」

「四季はそういうのわかる?」

「わかるって?」

「涼みたいな子の気持ち」

 四季はふっと表情を崩す。

「わからないよ。あんなピュアな感性の子を簡単にわかるって言ってしまったら、何だかいけない気がするし」

「…そうだよね」

 由貴は考え過ぎて疲れたように寝転がった。

 四季は気遣わしげに見やる。

「由貴の気持ちを素直に話してみたらいいんじゃない?涼ちゃんだって、そんなふうに硝子細工でも扱うように大切に愛されても、幸せかはわからないよ。かえって由貴の心を遠く感じているのかもしれないし」

「──そうかな」

 由貴は起き上がって、四季の顔を見た。

「忍はそういうの平気?」

「──忍の話するの?」

「だめ?」

「僕はいいけど、忍が傷つくかと思って」

「そっか…。そうだよね」

「傷つかないと思う程度で話せる範囲なら、僕が髪撫でたりしても、忍そんなに嫌がらないよ。たぶん忍は情緒的にそのあたりは大人なんだと思う」

「抱きたくなったりする?」

「…時々。でも、僕、別の意味で抱いていいのかわからないんだけど」

「──え?」

「いいのか、主治医に聞いたことない」

「そうだ…。それ聞きづらいね」

「でしょ?」

 それでも四季は幸せそうに笑った。

「いいよ。別に。僕、忍に愛されてるし、幸せだから。忍のこと大事にしたいし。僕はきちんと身体が良くなってからでいい」

「偉いね、四季」

「由貴も偉いでしょ?」

「…偉くないよ」

「ふふ。拗ねてる」