時は今




 忍はそこまで目を通して、涼に話した。

「私のお祖母様のことが書かれてる。静和、そのことを心配していたみたい」

「そう」

 涼は納得したようだった。

 忍は続きを読み始める。

『僕が日本に帰国してから、君にこの手紙をすぐに渡せなかったのは、空港に着いてすぐに身の危険を感じたからでした。ドイツに向かうまでは、そんなことはなかったのに、帰国してから急に。僕はこの手紙のせいかと思い、父にも話し、しばらく様子を見ることにしました。そして、あの日事故が起こったのです』

 忍は胸がしめつけられる。わけのわからない電話の正体がわかった気がした。

『お祖母様に書いてもらった手紙は、事故が起こってから無くなったことに気づきました。僕は忍にそれだけは届けようと探しましたが、見つからず、先日、やっと見つけて取り戻したのです。忍、言いにくいことですが、君のお母様──葵さんが、この件に絡んでいる可能性があります。お祖母様の親族の者と、君のお母様がどう接触をしているのかがわからないのですが。僕も父も、君をなるべく、君のお母様のところから引き離そうとしたのには、そういった理由があったからでした。忍、僕と父がお祖母様の手紙のことを知っていると襲った者達が認識している以上、君が桜沢の家にいる間は、また狙われるかもしれません。お祖母様からの手紙は君が読んで後、四季くんに預けた方がいいかもしれません。まさか四季くんが君のお祖母様の手紙を持っているとは、襲った者たちも思わないでしょう。孫である君も手紙の存在を知らなかったくらいだから。君が桜沢の家から、四季くんの家に自然な形で移れるよう、父への手紙も四季くんに代筆してもらいました。先日君と四季くんに渡した鍵を僕の父に持って行ってみてください。父ならわかるはずです。君が四季くんの家で落ち着いてから、時期を見て、ふたりで手紙を持ってお祖母様のところを訪れてみるといいでしょう』