涼は忍の言葉を聞いていると心が落ち着いてきた。
「ありがとう、忍ちゃん」
「うん」
「忍ちゃんは?恋の魔法はとけてしまったの?」
忍は苦笑する。
由貴への恋の魔法なら、すっかりとけてしまった。
四季とは不安を感じながらつき合い始めたから、何だか順番が逆になっている気がする。
「私…今までまともに向き合えた男の人は静和だけだったの。でも、由貴と涼に私の歌が聴こえて…由貴を見ていて、こんな男の人もいるんだって思って、由貴に救われた部分もある。四季には、好きだと言われてから、四季のこと考えるようになったの。だから、四季への気持ちは恋の魔法というより…四季が私の心を癒してくれた、という方が自然ね」
「そう。四季くん優しい?」
「うん。四季がいなければ今の私はいなかったと思うわ」
四季がいてくれて良かった。
もし、四季がいなければ、こんなふうに穏やかな気持ちで涼とこんな会話が交わせることもなかっただろう。
忍は四季から渡された、静和の封書を見つめた。
涼も気になっていたように、忍の手にあるそれを見る。
「忍ちゃん…。それはお兄ちゃんからの手紙?」
「うん…。静和は、私が生きると決めた時に、一度別れの言葉を言っているはずだから、これは愛の手紙だとは考えにくいの。それも、四季にこれをお願いするなんて」
「……。お兄ちゃん、四季くんに忍ちゃんのこと、お願いしたかったのかも」
「……」
「忍ちゃんが怖い思いしないように」
「そう…なのかな」
それはそれで──。
忍は目頭が熱くなった。
「──読んでみていい?」
「涼、ここにいて大丈夫?」
「少し目を通してみて大丈夫そうなら、涼にも見せるね」
「うん」
──忍は静和の手紙の封を丁寧に切った。


